安心・安全に関する記事
生後3カ月未満の「スリング」 股関節脱臼 ご用心 脚が自由に動くように 抱っこの姿勢に工夫を
乳幼児の抱っこ用具として近年、「スリング」が人気を集めている。だが、生後三カ月未満の赤ちゃんに使用する際には、股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)になる可能性もあり注意が必要だ。頻繁に発生しているわけではないが、福岡市立こども病院・感染症センターの藤井敏男副院長(整形外科医)は「股関節を自由に動かせる姿勢を心掛けて」と、予防の大切さを呼び掛けている。
藤井医師によると、生まれたばかりの赤ちゃんは、全身の関節が軟らかい。産道を通りやすくするためで、生後三カ月ころまで軟らかい状態が続き、次第に硬くなっていくという。
赤ちゃんは股関節が開き、自由に動かせるM字型の姿勢が理想という。反対に、赤ちゃんの脚を伸びた状態で固定すると、筋肉の一部が大(だい)腿(たい)骨を引っ張り、関節が軟らかいこともあって、股関節がずれることがある。「先天性股関節脱臼」と呼ばれる症例だ。
スリングは乳幼児を布で包んで抱っこする。胸元で抱いたり、おんぶしたり多様な使い方ができ、自分で作り使っている人もいる。藤井医師が懸念するのは「脚が閉じて伸びたまま固定される」使い方で、赤ちゃんを横抱きなどにして、下半身を布でスッポリ包んだ抱き方で見られる。
藤井医師によると、日本では一九七〇年ころまで、先天性股関節脱臼の発生率は約1%で、医学的に高いレベルにあった。七〇年代に全国的な予防運動が始まり、股関節を動かしやすい衣類の開発や、抱っこの仕方の見直しなど、さまざまな取り組みにより、八〇年代には0・3%程度に減少した。
藤井医師も、専門医でつくる「先天性股関節脱臼予防研究会」の事務局長を務めるなど、予防運動に携わってきた。それだけに、脱臼予防の取り組みが下火になる中で、スリングが急速に普及している点が気掛かりだ。「再び患者を増やす前に啓発する必要性を感じている」と話す。
三カ月未満の赤ちゃんにスリングを使用する際には「脚を真っすぐ伸ばす姿勢は避けること」。抱っこする人のおなかをまたがせるように赤ちゃんを支えるとよい。
使い方については、販売店などで組織する「日本ベビースリング協会」が、首のすわらない時期のより安全な抱っこの仕方を検討し推奨案も出している。整形外科医を中心に啓発の動きも始まっており、安全なスリングの使い方について、よく知ることが大切だ。 (簑原亜佐美)
× ×
【写真説明1 】スリングを使う際は、脚を伸ばしたまま固定すると好ましくないという(写真の赤ちゃんは生後半年で、脚は曲げている。布の端は通常下げる)
=07/4/4付西日本新聞朝刊=








