子育て支援に関する記事
長崎市の乳幼児医療費助成制度 保護者の負担軽減実現 少子化対策にも有効
長崎市は4月、小学校就学前の子どもが対象の乳幼児医療費助成制度を「現物給付」に切り替える。市が発行する受給者証を医療機関の窓口で提示するだけで助成が受けられるようになる。47都道府県の約半分がこの方式を導入しているが、長崎県は財政負担増などにつながると長崎市を批判し、県としては申請が必要な現行の「償還払い」を続ける考え。少子化対策としても注目される乳幼児医療費助成制度の問題点を探った。 (長崎総局・前田絵)
◆800円が上限
長崎市は19日から市内の医療機関向けに現物給付の説明会を開き委託契約の締結を呼びかける。市の担当者は「強制力はないが、多くの医療機関が市と契約し新方式に切り替わるはず」。市民には、広報誌やポスターで周知を図る考えだ。
長崎県の乳幼児医療費助成制度は、子どもの診療1回当たりの本人負担は800円が上限で、同じ疾病で同じ医療機関であれば1カ月の負担は1600円まで。長崎市では4月以降、子どもの疾病で市内の医療機関で診療を受けても、窓口で800円以上払うことはほぼなくなるという。
長崎市こども部の馬場豊子部長は「手続き不要の現物給付実施は少子化対策の最たるもの。子どもが急病のとき、財布の中を気にせずに病院に駆け込める環境整備を優先させた」と説明する。
◆3割は申請せず
長崎市の子どもを持つ親から歓迎の声が上がるのは、現在の手続きが煩雑だからだ。
県内の市町は県が基準としている「償還払い」を採用。保護者はかかった医療費をいったん医療機関に支払い、市町に申請して限度額を超える負担分を助成として受け取れる。しかし、独自に保護者の手続きをなくした大村市以外では、毎月分の領収書を機関別に仕分けして申請書を作り、市役所や町役場の窓口に提出するか、郵送しなければならない。「子育てに時間を取られ、申請書類を書く時間がなく結局、あきらめた」という人は少なくない。県の試算では、助成を受けているのは対象の約?%にとどまっているという。
長崎市が導入する現物給付は九州では福岡、佐賀、大分、宮崎の四県が全面的に導入し、熊本県では各自治体が現物給付と償還払いを選択できる。しかし、長崎県内で長崎市に続く動きは今のところない。国が現物給付は総医療費の増大につながると警戒し、導入した市町村への国民健康保険国庫負担金を減額する措置を取るからだ。
◆補助率引き下げ
乳幼児医療費助成の対象を05年10月に、それまでの3歳未満から就学前まで拡大した県も、財政が厳しく現物給付には否定的だ。
県は市や町に、乳幼児医療費助成の2分の1を補助しているが、2008年度から長崎市への補助率だけを3分の1に引き下げる方針。県の担当者は「見直しは、現物給付の導入と無関係ではない」と言い、他の市や町をけん制する。
昨年12月に長崎市が県に補助率据え置きを要望した直後の会見で金子原二郎知事は「本当に制度を利用したい人は自分で領収書を集めて手続きをしている。制度を利用していない人たちにまで手厚い恩恵を与える必要があるのか」と長崎市を批判した。
これに対し、女性団体や医療団体で構成し県内全域での現物給付導入を求めている「乳幼児医療長崎ネット」の西川英恵代表世話人は「助成制度は対象者に均等に行き渡るのが基本」とし「子どもを産む、産まないという判断は経済的な理由が大きい。教育や医療にお金がかからないようにすることが大事だ」と制度改善を訴える。
九州七県のうち、長崎と同じ「償還払い」の鹿児島県は、3月から申請が不要な自動償還方式を導入し、保護者の負担を軽減する。人口減少が続く長崎県。目先の財政負担を理由に制度改善を見送れば、将来の県勢に影響しかねない。
=2007/02/18付 西日本新聞朝刊=








