西日本新聞


麻しん(はしか)排除への対策

2008年 05月 15日 | 病気どうする?

麻しん(はしか)は昔、「命定め」のやまいと言われ麻しんに罹ったら命がどうなるかわからないと恐れられていました。しかし1978年(昭和53年)から麻しんの高度弱毒生ワクチンが定期接種となり麻しん患者は著明に減少しました。

 2007年(平成19年)は、関東一円で麻しんが流行して、高校や大学などでは休校や休講する騒ぎになりました。過去10年では最も多く流行しましたが、その後、地方に広がりました。
 予防接種を受けていなかったり、麻しんに対する抗体が低下している世代がかなり存在していることがうかがわれます。
 
このような事態はワクチンによる予防摂取率を上げることがいかに重要かを再認識させられました。
麻しん排除を宣言した米国やカナダなど複数の国がありますので、わが国も麻しん排除を目指して国民全員が一丸となって努力しなければなりません。
 
 Q 麻しん排除(elimination)とは?
 A 麻しん排除の定義を述べます。
  ①輸入例を除き麻しんと確定された例が1年間に人口100万人当たり1例未満であること。
  ②全数報告など優れたサーベイランスが実施されていること。
  ③2回行う麻しん含有ワクチンの接種率が各々95%以上を確保・維持出来ること。
  ④輸入例に続く集団発生が小規模であること。

 Q 麻しんはどんな病気ですか?
 A 麻しんウイルスの感染が原因となって起こる病気です。
 潜伏期間は10日から12日間で、発病すると38℃前後の熱が3日から5日間続き、咳、鼻汁といったかぜに似た状態から始まり、目やに、まぶしがる、結膜炎といった症状を伴ってきます(カタル期と言いこの時期が最も感染力が強い)。
 コプリック斑一旦、熱が下がり、その頃に頬粘膜にコプリック斑(図1)と呼ばれる白色の斑点が出現しますが、24時間以内に消えますので専門家でないと確認が困難です。
再び39℃から40℃の高熱が出るのとほぼ同時に特有の発疹(図2)が耳の後部から頚部、顔、体幹、上肢から下肢へと広がります。
3日から4日間で熱はおさまり発疹は褐色を帯びてきて(色素沈着)、1から2週間で消えてゆきます(図3)。治ったあとも約1ヵ月間は免疫力が低下しますので、種々の感染症への注意が必要となります。

 Q 麻しんはどのようにして感染するのです?
 A 麻しんウイルスは極めて感染力の強いウイルスで、空気感染、飛沫感染、接触感染をします。麻しんに対する免疫が無い人は、90%以上が発病します。

麻疹の発疹
 Q 麻しんの合併症は?
 A 中耳炎、喉頭炎、肺炎、脳炎(1000人に1人の頻度、成人でも起こる)が主な合併症で、肺炎や脳炎は死亡原因(死亡率は0.1から0.2%位)となり得ます。
 10万人に1人とまれですが、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と言い麻しん罹患後10年後から発症することがあります。

 Q 麻しんの治療法は?
 A 麻しんウイルスに直接有効な薬は現在のところありませんので、対症療法となります。 十分な水分摂取、輸液療法、細菌感染に対する抗菌療法などです。

麻疹の経過
 Q 麻しんは季節ではいつ頃に流行しますか?
 A 春から夏にかけて即ち4月から6月に流行のピークがあります。

 Q 過去10数年間流行状況は?
 A 2001年(平成13年)に、1993年(平成5年)に次ぐ流行がありました。

 Q 今回、なぜ数年ぶりに流行しているのですか?
 A 日本では、1966年(昭和41年)からKL法(不活化ワクチンと生ワクチンの併用)が始まりました。
 1969年(昭和44年)から高度弱毒生ワクチンが開始され、1978年(昭和53年)10月から定期予防接種になりました。(図3)
 さらに、1989年(平成元年)4月からMMRワクチン(麻しんに風しんとおたふくかぜワクチンが加わったもの)が導入されました。

 しかし、おたふくかぜワクチンが加わったことで、無菌性髄膜炎を高率に合併することが問題になり、MMRワクチンは1993年(平成5年)4月に中止となりました。それがきっかけとなり、麻しんワクチンの摂種率も低下しましたが、平成11年度から平成12年度は77%から81%と上昇し、最近では90%以上となっています。

 今回の流行の理由として、1)麻しんワクチンの未接種者が高校生や大学生に成長した。2)麻しんワクチンを受けて免疫が出来たが、野生ウイルスによる自然麻しん患者が減少して免疫が増強されなくなり、麻しん抗体が漸減した。3)ワクチンを接種したが抗体が産生されなかった人が存在している。
 以上が、10代から20代の年齢層で流行した要因と仮定されます。

 Q 麻しんの予防法は?
 A 麻しんに罹るのを予防するには、ワクチン接種を行うことが最善の策です。
 麻しん患者と接触して、3日以内なら麻しんワクチン接種で感染を防止出来る可能性があり、6日以内ならガンマグロブリン筋注で発病を抑え得ると言われますが、平常時に、免疫を獲得するためにワクチンを接種することに勝るものはありません。

 Q 麻しんワクチンの有効性は?
 A 麻しんワクチン接種者の95%から98%に抗体が陽性になります。
血液中の抗体はワクチン接種2週間後から出現しますので、その頃から感染を防ぐ効果があると考えられます。

 Q 麻しんワクチンで出来る抗体はどのくらいの期間続くのですか。
 A 野生の麻しんウイルスが感染して起こる自然麻しんでは、生涯免疫が続きます(終生免疫)が、毒性を極めて弱くしている麻しんワクチン接種による抗体は約10年で感染の恐れがある状態にまで免疫力が減少します。免疫が低下した状態で麻しんに罹ると麻しんの症状が軽く現れこれを修飾麻しんと言います。
 野生の麻しんウイルスに感染した麻しん患者が少なくなり、追加免疫効果(ブースター効果)が得られなくなったので、2006年6月2日から、5歳以上7歳未満で小学校就学前1年の間に接種するように、第2期のMRワクチンもしくは麻しん(単抗原)ワクチンの定期接種が開始されました。

 Q 麻しん風しん混合(MR)ワクチンや麻しんワクチンの副反応は?
 A 接種後、5日から14日の間に37.5℃から38.5℃の熱が25%前後に軽い発疹が10%前後の人に出現することがありますが、通常は1日から3日間で改善します。
 また、注射部位の発赤、腫脹、硬結が起こることがあります。
 その他の副反応はアナフィラキシー様症状というアレルギー反応が極まれに起こりますので、アレルギー体質の人はかかりつけ医と相談してください。
 脳炎が100万から150万接種者に1人以下の頻度で起こりますが、麻しんに罹るとその何倍もの頻度で合併症が起こります。

 Q 妊娠中や妊娠の可能性がある女性は麻しんワクチンを接種しても良いですか?
 A 妊娠中やその可能性がある女性は麻しんワクチン接種を受けてはいけません。流産や早産を起こす恐れがあり、風しんワクチンが混合されているMRワクチンは先天性風しん症候群児(先天性心疾患、難聴、白内障など)を出産する可能性がありますので、妊娠可能な婦人はあらかじめ約1ヵ月間避妊した後に接種して、接種後も約2ヵ月間避妊が必要です。

 Q 麻しんに対する免疫の有無はどうしたら判りますか?
 A 採血をして、抗体検査(EIA法、HI法、NT法、PA法)を行います。
 ただし、結果がでるまでに数日を要します。また、料金は保険適応外で自費になります。麻しんであったかどうかの確定診断は麻しんウイルスの分離、麻しん特異的IgM抗体価の測定、急性期と回復期のペア血清で麻しんIgG抗体が有意に上昇することからなされます。

 Q 麻しんは天然痘と同様に根絶出来ますか?
 A 英国のエドワード・ジェンナーが1796年に種痘法を発見して天然痘はWHOが1980年5月に世界根絶宣言を行いました。ポリオもそれに近い状態にあります。
 麻しんは人から人への感染経路のみで、他に媒介する動物がいない、血清型は一種でワクチンが有効である、季節的に発生するなどの理由で根絶可能といわれています。
 排除から根絶を目指して麻しん輸出国という汚名を返上するためにも、1歳児の定期予防接種率を95%以上の確保・維持、第2期の定期予防接種率も95%以上に確保・維持する必要があります。
 
国は平成20年4月1日から平成25年3月31日までの期限付きで、MR混合ワクチン3期(中学1年)と4期(高校3年)の定期接種を開始しました。
これで平成24年度には22歳までが2回接種世代になります。平成24年度までに麻しん排除を目標設定した国の並々ならぬ決意を表しています。
さらに日本は麻しん排除を目指すと国際社会へ宣言するそうです。
         (福岡県医師会理事、日本小児科学会認定専門医 細山田 隆)

 

■病気どうする?の記事
おすすめ情報【PR】
福岡県警より

福岡県警からのメッセージ

行事のお知らせ 警察音楽隊による演奏活動などがおこなわれます。場所や時間はリンク先のページでご確認ください。

おすすめ情報【PR】
天気・交通情報
九州・山口の天気 福岡の天気 佐賀の天気 大分の天気 長崎の天気 熊本の天気 宮崎の天気 鹿児島の天気 九州・山口の天気 交通情報
九州のりものinfo.com
子育て夢ひろば 特集
注目コンテンツ