西日本新聞


感染性胃腸炎の対策

2006年 12月 26日 | 病気どうする?

 感染性胃腸炎の原因の一つとしてノロウイルスがありますが冬場の食中毒を起こすウイルスとして有名です。ノロというといかにも鈍い感じをうけますが、1968年米国オハイオ州ノーウォークの学校でこのウイルスが原因の胃腸炎が集団発生した地名ノーウォークに因んでいます。

 このウイルスは直径30ナノメートル(ナノは10億分の1メートル)と極めて小さく、数個から100個で感染し人の体内で増殖します。そのため、かなり流行の勢いが強くすばやい対応が必要となります。
 食中毒の対策は以前取り上げましたので、今回は細菌性のものは触れずに、ウイルス性のものに限定しました。

 Q 感染性胃腸炎とはどんな病気を言うのですか?
 A 平成11年4月までは0〜3歳でロタウイルスが原因となる胃腸炎は乳児嘔吐下痢症としていましたが、感染症法上それ以外の胃腸炎も含めて感染性胃腸炎と呼ぶようになりました。
 毎年晩秋から冬にかけて流行する胃腸炎の主な原因はウイルス感染によるものです。

 Q 感染性胃腸炎の原因となるウイルスにはどのような種類がありますか?
 A ロタウイルスは生後3ヵ月から2歳までの乳幼児に多発し、4〜5歳までにほぼ全部が感染します。
 ノロウイルスは小児から成人まで全年齢に発生し、時には集団発生して冬の食中毒の原因となり、多くの遺伝子型があります。今回の流行はGⅡ4という遺伝子型が大部分です。
 腸管アデノウイルス(40や41型)は2歳未満の小児に多く、年中発生し下痢の持続は10〜14日間と長い。
 アストロウイルスは幼児に多く、症状はロタウイルスより比較的軽い。

 以下はノロウイルスとロタウイルスについて述べます。

 Q ノロウイルスとロタウイルスによる感染性胃腸炎が流行する季節はいつですか?
 A 冬の前半はノロウイルスが主に流行し、後半はロタウイルスが優勢となりますが、中頃は両者が混在します。
 ノロウイルスは11月頃から増加し始め12月から3月をピークとして後は徐々に減少していきます。ロタウイルスは1月頃から3月にピークとなり、5月から減少していきます。流行の時期は、その年の気候によって多少のずれが生じます。

 Q ウイルスによる感染性胃腸炎の原因となる食品と感染経路について教えて下さい。
 A ノロウイルスは①ウイルスで汚染された牡蠣をはじめとする二枚貝(下水中に含まれるウイルスが貝の内臓で濃縮されるため。)を生や加熱不充分な状態で食べた時。②流行期では患者のウイルスで汚染された果物や野菜など生で食べる食品。③患者の糞便や吐物。などから経口感染します。
 ロタウイルスは患者の唾液、吐物や糞便に極少量でもウイルスが含まれていたら経口感染します。

 Q ノロウイルスとロタウイルスによる感染性胃腸炎の潜伏期間はどの位ですか?
 A ノロウイルスの潜伏期間は12時間から48時間と極めて短く、ロタウイルスも24時間から72時間と短い。

 Q ノロウイルスとロタウイルスによる感染性胃腸炎はどのような症状が起こりますか?
 A まずノロウイルスによる感染性胃腸炎についてですが、発病すると吐き気、嘔吐、下痢、腹痛が急激に起こりますが、通常熱は38℃以下であまり高い熱は出ません。症状は2日位でおさまりますが、体力の低下した人や老齢者では吐いた物を誤嚥して肺炎を併発するか、窒息で危険な状態になることがあります。
 次にロタウイルスによる感染性胃腸炎についてですが、ウイルスは1973年に発見されましたが、それまでは水様性の下痢便の色が白っぽいので、白色便性下痢症、白痢、仮性小児コレラ、嘔吐下痢症などと呼ばれていました。‘ロタ’とはウイルスの形から車軸状という意味です。症状は嘔吐と発熱で始まり、続いて頻回のうす黄色から白色の水様下痢便が起こります。嘔吐、発熱は普通2日目から軽減しますが、下痢は5〜7日間続きます。注意点は、乳児では対応が遅れると脱水が急速に進行し易いことです。

 Q 感染性胃腸炎はどのように診断するのですか?
 A 今回はウイルスが原因となる感染性胃腸炎の診断法につき述べます。
 ロタウイルスとアデノウイルスは糞便を検体として用いる迅速診断が可能です。ノロウイルスは遺伝子学的方法により検査しますので、結果が出るまでに時間がかかりますし、健康保険適応外ですから集団発生など特別の状況でしか検査致しません。症状や経過、患者の年齢、周囲の流行状況、下痢の性状から診断をします。血液検査や検尿を行うと脱水の程度が判明します。
 感染性胃腸炎と同じような症状がある患者の中には、虫垂炎(通称‘もうちょう’)、腸閉塞や腸重積などの病気がまぎれていることがありますので留意しなければなりません。

 Q 感染性胃腸炎の治療法について教えて下さい。
 A 今回はウイルスが原因となる感染性胃腸炎の治療法につき述べます。
 現在の所、原因となるウイルスに効く薬はありませんので、嘔吐や下痢および脱水への対症療法になります。
 一般に、嘔吐は1〜2日でおさまります。始めは胃を空にして小腸を休めるため人により異なりますが1〜2時間位絶食にします。普通、吐き気は徐々におさまってきます。吐き気止めの座薬を使用することもあります。
 下痢に対しては乳酸菌製剤が主に用いられますが、嘔吐と下痢から水分や電解質が失われるので脱水症になる心配がありますから予防対策が重要となります。
 吐き気が少しおさまってきたらイオン飲料や経口補水液をスプーン一杯から始め10分間隔で与え嘔吐が無くなれば量を増やして行きます。尿が出れば一段落つきます。
 以前、嘔吐の対策の項で述べましたが吐物に加え下痢からも水分や電解質が失われます。
 下痢から排泄される電解質はナトリウムイオンに注目して数値で示しますと、下痢便で、30〜60(単位はmEq/L)、イオン飲料は30、経口補水液は50です。
 かかりつけ医の指導に従って飲用させて下さい。それでも症状が改善しなければ、静脈からの輸液を受けるのが賢明です。
 注意して欲しいのは、イオン飲料にはほとんど栄養価がないことです。
 便の状態が良くなれば、いままで行っていた食事にもどしていきます。
 同時に、下痢便でお尻がかぶれ易いので清潔に保ってやります。

 Q ウイルス性感染性胃腸炎は感染力が強いと聞きましたが、予防や消毒について教えて下さい。
 A 最初に、ノロウイルスの対策を述べます。
 まず、ウイルスが付かないようにします。
① トイレの後、あむつを替えた後、食事の前、食事の仕度の度に毎回石鹸を使って流水で丁寧に付着物を洗い落とします。後はペーパータオルで拭きます。
② 牡蠣をはじめとする二枚貝、野菜サラダなど加熱しないで食べる食品は細心の注意が必要です。
 流行期は、可能ならば加熱(中心部まで85℃以上、1分間以上)して調理します。
③ 生ものを扱った器具は熱湯などでよく消毒します。
④ 症状が改善した人でも7日間位便からウイルスが排泄される恐れがあるので、念頭に置いて下さい。
⑤ 消毒薬は次亜塩素酸系のものを、取扱いに注意して使用します。
 ロタウイルスも伝染力が強いのでノロウイルスの対策に準じます。
 特に、吐物と下痢便の付着したおむつは、乾燥しない前に迅速な処理が重要です。
 
 少し長くなりましたが、ウイルスは極めて小さな粒子で、光学顕微鏡でも見えない物体が数個から100個位でも人に感染して発病するので、油断出来ません。流行期はよく加熱して調理して下さい。
 恐れることはありません。常日頃から外出して帰宅後はうがいして良く手を石鹸で洗うといった習慣をつけることは種々の病気の予防になります。日頃からバランスの良い栄養摂取を心がけて体力をつけるのは、何気ない方法ですが効果があるものです。たとえ病気に罹っても軽くてすみます。

(福岡県医師会理事、日本小児科学会専門医 細山田 隆)

 緊急の場合は福岡県医師会の24時間相談電話 #8000番、日本小児科学会の救急ホームページをご覧ください。予防接種についてのお知らせもあります。

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